「ほんと嫌になんね、暑いのって」

そう言う彼の額には、汗なんてひとつも滲んでいない。わざわざ見なくたってわかる。だって──今まで一度も、見たことがないんだから。


「慶介は色白で羨ましいなー」
「だって俺。夏に外出たら死ぬし?」
「……、うん」


夏に外に出たら死ぬ。これは大袈裟な表現ではない──彼にとっては本当にそうなのだ。


「夏、嫌いすぎて殺したい」
「あはは、そう、だよね」


私は、違うのに。慶介のために、アイスを買いに走る夏は、嫌いじゃないのに。だけど、それを口にできないのは。


「いつか治んのかな……これ」