眼下で柔らかそうな黒髪が揺れる、脈が速まる。気づかないうちに息を止めていた。

大きな手が、布越しに私に触れている。あまりの近さに呼吸もままならないから、離れてほしいと思うのに、綺麗な指からなぜか目が逸らせず。

また、ぽたりと雫が落ちた。今度は、透明な。

慌てて額を拭うけれど、汗は意識すれば余計に流れてきてしまうもの。


「──暑い?」

下からすくい上げるように見つめてくる瞳の中、に、私が映っている。見透かされそう……だ。

囚われる前にと、食べかけのアイスのほうへ逃げた。