「だから違う。俺はアイス“クリーム”じゃ駄目なんだって」


わざわざコンビニまで走ってくれた相手に対して、お礼よりも先に文句をこぼす。そういう人間だ、この男は。


「俺が食いたいのはザクザクしてて、キンキンに冷えた……」
「かき氷はもう置いてなかった」
「はあ?」
「もうすぐ夏終わるじゃん。仕入れるアイスの種類が変わるのは、しょうがないよ」


疑わしげな瞳が向けられる。その視線を無視してカップアイスの蓋をはずすと、彼は諦めたようにため息をつき、溶け始めた部分に透明なスプーンを刺した。

人工的なバニラの風味が広がって熱い舌の上で溶けていく。固体から液体に、あっけないほど一瞬で。

正面に座る男に目を向けると、切れ長の奥二重が私を睨んでいた。