春日井と打ち解けてしまえばあとは簡単だった。ソウタくん――ハルカちゃんのお兄ちゃん――はフラワーに来る男の子たちの中にほどなく馴染んだ。
 たまに顔を出す他の小学校のメンバーとも仲良くなり、それをきっかけに子どもたちの輪が広がったようだった。

「もともとリーダータイプの子なんだろうな」
 園美さんが分析する。
「その分、自分の思う通りにならないとイライラしちゃうの。周りと自分の思いとの折り合いがつくようになれば、ものすごく力を発揮できるんじゃないかな」

 なるほど、と由香奈は思った。実際、子どもたちの様子を見ていればいろいろな気質の子がいることがわかる。当たり前だけど、みんながみんな同じわけじゃない。同じ対応がうまくいくとも限らない。
「春日井くんのは、本能だろうね。直感で、相手が本当にしてもらいたいことがわかっちゃうんじゃないかな」

 してもらいたいこと。反芻し、由香奈は耳が熱くなるのを感じる。園美さんがにやにやしているのが目に入ったけど、精一杯知らんふりしておいた。




 規則的だけど不健康で内に籠りがちだった以前の生活から、今はクレアや園美さんたちのおかげで、社交的で目的のある毎日を送れている。楽しい、とも感じる。そんな気持ちの緩みを突かれるように朝、エレベーターで松田とかち合った。

「元気そうだね」
 四階から乗り込んできた彼は挨拶のようにつぶやき、由香奈に迫った。壁に追い詰められて顎を掴まれる。声をあげる前に乱暴にくちびるを奪われる。あっさり侵入されたことに羞恥して抗ってみても、うごめく舌が立てる音がいやらしさを増すだけだった。

 多分、この数か月で最も多く接した唾液の匂い。コトの始まりから終わりまで叩き込まれたからだが反応する。気持ちイイことをたくさんされた。気持ちイイことは嫌いじゃない。気持ちイイことが好き。