改めて、お手伝いしますと伝えると、園美さんはとても嬉しそうに笑ってくれた。クリスマスイベントは張り切ってやりたいと、スーツを着込んで企業に協力のお願いに回るようになった。
 やっぱり大変なことなのだと由香奈は思う。そういうふうに背負う人がいて、支えてくれるスタッフがいて、ほんの少しで良いから助けてほしいと頼まれて、心を動かされるのが人情というものだろう。

 子どもたちと一緒にクリスマスツリーを工作したり、店内の飾りつけを少しずつ増やしていく日々が続いた。あれから松田と会ってもいないし姿を見かけてもいない。中村とカノジョらしい人がマンションを出入りするのなら、二度ほど見かけた。

 流されることで安穏としてきた由香奈にとって、断ち切った反動があるのかないのか、それすらもわからなくてまだ気持ちは落ち着かない。ただ、やり切った満足感はあって、居たたまれない思いは大分薄まった。だけど、それでもやっぱり。

「告白しないの?」
 フラワーで花飾りを作りながらクレアにこそっと囁かれた。子どもたちは向こうのテーブルでおやつのクッキーに夢中になっている。由香奈はクレアに向かってふるふる首を横に振った。
「なんで? 最近、由香奈イイ感じじゃん。なんか吹っ切れたんだなって」
「うん……」

 重ねた薄紙を丁寧にはがして花の形に整えながら、由香奈は小さく笑う。
「そうだけど。でも、それとこれとは違うかなって」
「何がさあ? また訳のわかんないこと言っちゃって」
「ごめんね」
「あたしに謝ってもしょうがないでしょうが」

 口を尖らせ、クレアはまた声を潜めた。
「カスガイさんのことはパスってこと?」
「…………」
「それでもいいと思うけどね。男はあのヒトだけじゃないもん。そだ、クリスマスの前に一緒に美容院行こうよ。もっと可愛くしてもらお」

 そうして定休日の水曜日に美容院に出かけ、セミロングに伸びた髪に今度はきつめの内巻パーマをかけられた。
「華やかな季節にちょうどいいよ。髪色変えなくてもいけるし」