「小学校四年生って、ギャングエイジ真っ只中だからねえ」
 ミエちゃんたちがふさぎ込んだままのハルカちゃんを連れて公園へと行ってしまうと、遠巻きに話を聞いていたらしいスタッフさんが園美さんと話し始めた。

「ギャングエイジ?」
「子ども同士の仲間意識が強くなって、徒党を組んで大人に隠れて悪いことをしだすの」
 首を傾げたクレアに園美さんが説明する。

「もちろん、悪事は可愛いものだけどね。それで親に反抗するようになって家庭がこじれちゃったり、仲間内でうまくいかなくなった場合は輪の中に入れてもらえなくなって悩んじゃったり。そういうのも、大事な成長の過程なのだけどね」
「組織で生き抜く術をそこで学ぶわけかあ」
 あくまでのんきで他人事のようなクレアの感想に園美さんはそうそう、とくすりと笑った。

「ハルカちゃんのお兄ちゃんは、グループに入らない一匹狼な感じね。けんかっ早いし、彼の半径一メートル以内に近づくなって怖がられてるみたい」
「ワイルドだなあ」
「ねえ」
 園美さんものんきな様子だったけど、由香奈はハルカちゃんの暗い顔が気になった。でもそれも大丈夫なのかな、と思った。ミエちゃんたち友だちが味方でいてくれるのだから。

「実際、問題として大きいのは悩んだ親が孤立しちゃうことの方ね。昔と違っておうちの中のことまで他人が関わるのが難しいから、学校や、子ども同士のトラブルが大きくなったときに、相手の親とのやりとりでお母さんお父さんがまいってしまって、それが子どもに影響することがいちばん怖い。だから親同士の交流をもっと、うちでも促せたらって思うのだけど」

 心なし熱を帯びた園美さんの話を聞きながら由香奈は思い出す。一緒に来た親同士話ができて、と春日井もそんなふうに言っていたな、と。