学校にもどこにも行かずに二日間ほど引き籠り、派手なインターホンの音と共にクレアに急襲されたのは、日曜日の午前中のことだった。
 その前にもクレアからメッセージが届いてはいた。由香奈がフラワーに来ないから女の子たちが寂しがってる、と。嘘でも嬉しかったし心を動かされたけど、体は重くて動けなかった。

 基本クールなクレアがわざわざインターホンを鳴らすのは初めてのことだったから、由香奈はそっと玄関のドアを開けた。
「由香奈、買い物行こうよ。冬物のコート。待っててあげるから五分で支度ね」
 あまりに問答無用でクレアが言うので反抗する気も起らず、由香奈はばたばた着替えと洗顔をしてバッグを掴んで外に出た。エレベーターに乗り込んだとたんにお腹が鳴る。

「まずはご飯だね」
 恥ずかしかったけれど、クレアの笑い方が優しかったのに救われて、由香奈はこくりと頷いた。ハンバーガーショップでモーニングセットをもそもそ食べながら由香奈はクレアに尋ねた。
「買い物ってどこ? あんまりお金は……」
「大丈夫。いいとこ連れてってあげるから」

 クレアに教えてもらった店にハズレはないから、由香奈は素直に従うことにする。連れていかれたのは、駅舎を挟んで向こう側のコンベンション・センターだった。中でもいちばん大きなイベントホールで、フリーマーケットが開催されていた。
「毎年二回やっててね。あたしも出店したかったけど、今回は抽選ではずれちゃってさ。悔しいから、いっぱい値切って買い物してやろう」

 出店ブースでは、お店のようにディスプレイして手作りらしいアクセサリーを並べていたり、やっぱりハンドメイドの鞄や帽子を可愛らしく展示しているストアに女性客が群がっていたけれど、大多数の個人出展者は古着や雑貨などを持ち込んでいるようだった。
 無造作に段ボールに入れたまま「どれでも50円」などと表示しているところから、ハンガーラックを持ち込んでそれっぽくワンピースやスカートやブラウスなどを吊り下げているところまで、いろいろだ。