「馬鹿だよねえ。由香奈ちゃんのココ、試さないなんてさ」
 下着の上から恥丘を撫でる。
「おっぱいもいいけど、ココも柔らかいんだよね」
 体を起こしてワンピースの裾をまくりあげ、中村は慣れた手付きでするする由香奈の下着を抜き取る。むき出しになったそこに視線を感じて由香奈は身じろぎもできない。

「うん、柔らかい」
 あまり触れられることのないふっくらした皮膚を、乳房にされるようにもにゅもにゅ揉まれる。もどかしい感覚に由香奈は息を乱す。左右を寄せて擦り合わされると敏感なところにまで刺激を感じてなおさらもどかしい。
「感じやすいなあ」
 由香奈は口元を手で覆って唾を呑みこむ。知らず知らずのうちにじりじり腰が動く。切なくて目に涙がにじんだ。




「ごめん。アイス駄目にしちゃって」
 あまりに悲し気な顔の由香奈に、中村は頭を掻いて謝る。
 快楽に負けてアイスそっちのけになってしまったのは自分だ。だから由香奈はいっそう哀しいのだが。

「ほら、代わりにこれ」
 恨めし気にレジ袋の中身を見つめていた由香奈は、差し出されたものに目を丸くする。本当は食べたかった高級アイスクリームのかぼちゃのフレーバーだ。
「……いいんですか?」
 高いのに。
「オレ食わないし」
 どうして彼が食べない物が自宅にあるのだろう。そんな疑問を由香奈は持たない。棚からぼたもちに夢中で。

「ここで食べてく?」
 由香奈はものすごい勢いで首を振る。自分の部屋でゆっくり食べたい。それにここは由香奈が飲食なんてできる場所ではない。由香奈はそう思っている。
 することをすませたら撤収。由香奈にはそれが染みついている。

「じゃあ、これ。運んであげるね」
 更に中村が引っ張り出したのは小振りの段ボール箱。小振りでも中には甲州名物のほうとうと、かぼちゃまで詰まっている。
「オレは食わないって言ってるのに送って寄越すんだよなあ」
 母親が届けてくれたのだろう差し入れを、自分なんかが全部貰って良いのだろうか。そんな考えも由香奈は振り払う。

 段ボール箱を抱えた中村とエレベーターを待つ。エレベーターが上がってくる。開いた扉の内側に管理人の藤堂がいた。
「こんばんは」
 ひょこっと首を竦めて挨拶し、中村はエレベーターに乗る。体を縮めながら由香奈もそれに続く。

「由香奈ちゃんにお裾分けです」
 訊かれてないのに中村はぺらぺら話す。
「管理人さんも食べますか、ほうとう。少し持ってきますか?」
「いや、私は粉ものは食べない」

 きっぱり断り、藤堂は四階でエレベーターを降りた。中村も由香奈も反応できないまま彼の背中を見送った。
 再び上昇したエレベーターが五階に着いて、もう夜遅い時間だから静かに通路を歩く。
 ふと中村が足を止めた。顔を寄せ、小さな声で由香奈に言う。
「ほうとうって粉もの?」