「……っ」
 ぴくんと頭をのけ反らせ由香奈は身じろぎする。柔らかい体が少し身動きするだけで密着した彼自身にも快感が伝わる。
「可愛いなあ」
 のけ反った首元に唇を滑らせながら手を下ろす。ニーハイの膝裏を持ち上げて腰を前後させる。

「あ……」
 無理やり頭をねじってくちびるをふさがれる。肌が震えて悶えそうなのに押さえ込まれて体を動かせない。彼女を高める指の動きに意識を集中する。かろうじて床についている片方のつま先に力を入れる。
 くちびるを逸らせて涙目になりながら由香奈は腰をじりじり揺らす。同じリズムで男の指の腹がくるくると乳房を撫でる。
「んぁ、ああ……っ」
 足の間のものをぎゅっと挟みながら由香奈は全身を震わせる。

 ぐったり自分の胸にもたれかかった由香奈の汗ばんだおでこを撫でながら中村は囁く。
「エッチなメイドさん、今日は付けないでいいよね」
 また片膝を持ち上げながら甘く中をかき回す。が、由香奈は流されなかった。

「ダメですっ」
 ぱちっと目を見開き、もがいて男の手を振り払う。
「絶対にダメです」
 自分の身を守るように背中を丸める。初めて見る頑なな態度。少し呆気に取られた中村はそれ以上強要せず、パソコン脇の物入れからコンドームを出した。

「手、ついて」
 由香奈は安堵の表情で素直に床に膝と手をつく。スカートの裾はめくれ、乳房は丸出しでお腹の周りに布地がまとわりついているだけの状態なことは、考えないようにする。

 膝の間をもっと開くようにされる。
「や、あ……っ」
 強い刺激に由香奈は肘をついて顔を伏せる。荒い息が零れてしまう。崩れた由香奈の背中を撫でながら男の攻めは止まらない。

(早く終わって)
 思ったとき、玄関のインターホンが鳴った。びくりと、口を押さえながら由香奈は目を上げる。静寂が下りた薄暗い部屋の中に、もう一度、響く。

「戻ってくると思った」
 再びゆっくり腰を動かし始めながら、笑いを含んだ声が背中に聞こえる。
(え……?)
 凍りついた由香奈の頭には、からだの快楽は伝わらない。ただ疑問符を浮かべる。