輝がユウジを殴ったのは一度。それなのに、ユウジは鼻血を出して子供のように痛い痛いと喚いている。ツルンとした板張りの床にしたたる赤い血を見た花梨は怖くなってきた。

　ユウジは、尻餅をついて鼻を押さえ込んだままヒステリックな声音で泣き叫ぶようにして訴えている。

「折れた！　僕の鼻が折れてる！」

　ずっと、ユウジが大声を出している。

「僕のマネージャーを呼んでくれ！　早く！　早く！　早く呼べよ！」