「嫌味?どう見たってないじゃん。まず、その顔、十人いたら十人好きな顔じゃん。綺麗と可愛い両方の顔立ちっていうの?スタイルだって、良いし」
「スタイルなんて、美咲の方がずっといいよ」
「あのさ、アタシもスタイル良いのは認めるけど、アンタ程じゃないわけ!」
小さく、ごめんと呟いた私を睨みながら、美咲は捲し立てるように言葉を続けた。

「勉強は、うちの学部常連トップ、水泳は、高校の時に全国大会優勝、陸上部からの誘いも絶えないくらいの瞬足だったし、家はタワマン最上階、あの、羽田コーポレーションの社長令嬢でしょ」

美咲とは、また同じ高校で、偶然にも、同じ大学、同じ学部だった。その事もあり、私は美咲と話したり、出かけたりすることが多かった。

ただ私はいつも美咲を……。

「ほんと、その性格よねー。穢れがないというか、真っ白というかさ、この間も、隣の学部の恵子(けいこ)から、ワザと突き飛ばされて、酷い捻挫してたじゃん」

美咲は、口を窄めながら、アイスラテを飲み干した。

「そんなこともあったね、でもあれは、私も悪いから」 

俯いた私のに、美咲がため息をついた。

「全然悪くないでしょ?恵子の付き合ってた彼氏が、アンタをたまたま見かけて、一目惚れしちゃって別れただけじゃん。そーゆーの逆恨みって言うんだよっ」

語尾を強めると、美咲は、人差し指で私のおでこを弾いた。

「あとさ、うちの大学のミスキャンパスに選ばれた絵梨子(えりこ)からも嫌がされされてたじゃん。花音が、出てたら絶対に優勝間違い無しだったって、その事が地元新聞に掲載されちゃって、ミスキャンパスに選ばれた絵梨子の面子丸潰れだったもんね」

私は、俯きながら、アイス抹茶ラテをかき混ぜ、マフィンにフォークを差し入れた。

「……絵梨子ちゃん、私なんかよりスタイルもいいし、美人だし、何で、私なんかを気にするんだろう」

美咲は、再度、「だから嫌味だって」、と口を尖らせた。

「ねぇ、花音、本当に絵梨子に、腹が立たないの?いま所属してる、水泳サークルの花音のロッカーにゴキブリの死骸入れられたり、SNSで、男遊びばっかしてるとか、花音の加工したベッド写真ばら撒かれたり」

「男の人と、そういうことしたことあるの事実だし、ゴキブリも絵梨子ちゃんだっていう証拠ないしね……」

「でも、アタシ偶然見たけどね、水泳サークルでも何でもない絵梨子が部室から、挙動不審にでてくるの」

「そうなんだ」

美咲の瞳を見つめた私を見ながら、美咲の顔が少しずつ歪んでいく。 

「アンタの名前こそ公にしてないけど、絵梨子のやってること犯罪じゃん、SNSで拡散してんの絵梨子だって、いくら馬鹿なアンタでも、分かってるでしょ?アタシだったら絶対ゆるせない」

美咲は、私の表情をじっくり眺めながら、吐き捨てる様に言った。