「聖も同じよ。たとえ龍神であっても、つがいの大切さは他の龍と変わらない。ましてや、聖は過去に凜を失っているのよ! なにかあったときには、聖は自分の命に代えてでもあんたを守ろうとするわ!」
「紅蘭様、姫様をいじめちゃダメです!」
「聖様は、姫様は悪くないって言ってたです!」
玄信と桜火に代わり、蘭丸と菊丸が必死に凜花を守ろうとしている。
ただ、蘭丸たちの言葉が紅蘭に効果がないのは、誰が見ても明白だった。
「それがどういうことだかわかる?」
「紅蘭様、やめるです!」
「姫様だって、つらいです!」
「聖がいなくなれば、間違いなく天界の均衡は崩れる。あんたの浅はかな行動ひとつで、聖だけじゃなく天界そのものを大きく揺るがすことだってあるの!」
必死に止める蘭丸と菊丸を余所に、彼女は叫ぶように言い放った。
怒りをあらわにする紅蘭の気は、まだ済んでいないのだろう。
「玄信も桜火も、この子を甘やかしすぎよ。この子が人間だからって、聖と同じようにどうせなにも教えてこなかったんでしょう? あんたたちにも責任はあるわ」
それでも、彼女は吐き捨てるように言い置き、踵を返した。
一言も言い返せなかった凜花を、蘭丸と菊丸が悲しそうな瞳で見上げている。
無言のままの玄信と桜火の態度が、凜花をより追い詰めた。
「……紅蘭様のおっしゃる通り、我々にも非があります」
静まり返った廊下に響いたのは、玄信の悔しげな声だった。
「聖様のご命令に背いてでも、もっと早くに色々とお話して姫様につがいとしての自覚をお持ちいただくべきでした」
彼の表情に厳しさが覗き、張りつめていた空気がさらに強張る。
「聖様は姫様が人間であることを踏まえ、『天界や龍のことは必要以上に耳に入れるな』とおっしゃられておりました。しかし、やはりそれには反対するべきでした」
玄信の言葉からは、聖の優しさが感じられる。
けれど、今の凜花にはそれが痛かった。
「私の顔の傷は、あの男……火焔につけられたものです。凜様の亡きあと、天界では大きな争いが起こり、私は致命傷とも言える大怪我を負いました」
玄信は息を吐くと、おもむろに続けた。
「紅蘭様、姫様をいじめちゃダメです!」
「聖様は、姫様は悪くないって言ってたです!」
玄信と桜火に代わり、蘭丸と菊丸が必死に凜花を守ろうとしている。
ただ、蘭丸たちの言葉が紅蘭に効果がないのは、誰が見ても明白だった。
「それがどういうことだかわかる?」
「紅蘭様、やめるです!」
「姫様だって、つらいです!」
「聖がいなくなれば、間違いなく天界の均衡は崩れる。あんたの浅はかな行動ひとつで、聖だけじゃなく天界そのものを大きく揺るがすことだってあるの!」
必死に止める蘭丸と菊丸を余所に、彼女は叫ぶように言い放った。
怒りをあらわにする紅蘭の気は、まだ済んでいないのだろう。
「玄信も桜火も、この子を甘やかしすぎよ。この子が人間だからって、聖と同じようにどうせなにも教えてこなかったんでしょう? あんたたちにも責任はあるわ」
それでも、彼女は吐き捨てるように言い置き、踵を返した。
一言も言い返せなかった凜花を、蘭丸と菊丸が悲しそうな瞳で見上げている。
無言のままの玄信と桜火の態度が、凜花をより追い詰めた。
「……紅蘭様のおっしゃる通り、我々にも非があります」
静まり返った廊下に響いたのは、玄信の悔しげな声だった。
「聖様のご命令に背いてでも、もっと早くに色々とお話して姫様につがいとしての自覚をお持ちいただくべきでした」
彼の表情に厳しさが覗き、張りつめていた空気がさらに強張る。
「聖様は姫様が人間であることを踏まえ、『天界や龍のことは必要以上に耳に入れるな』とおっしゃられておりました。しかし、やはりそれには反対するべきでした」
玄信の言葉からは、聖の優しさが感じられる。
けれど、今の凜花にはそれが痛かった。
「私の顔の傷は、あの男……火焔につけられたものです。凜様の亡きあと、天界では大きな争いが起こり、私は致命傷とも言える大怪我を負いました」
玄信は息を吐くと、おもむろに続けた。