「調理場での仕事は楽しいか?」

「うん、とっても!」


凜花が仕事を与えられてから半月。
聖からの問いに、凜花は笑顔で答えた。彼も安堵したように微笑む。


最初は分厚く剥くことしかできなかった野菜の皮も、日に日に薄く剥くことができるようになってきた。
しかし、風子の話ではもうすぐピーラーが完成するのだとか。
彼女はあの日に言っていた通り、早々に聖に頼んで道具屋を呼び、ピーラーを作るように依頼した。


その際、凜花は説明を事細かくさせられた。ピーラーを知っているのが凜花しかいないのだから、それは仕方がない。
ところが、風子は下界で使っていた他の調理器具のことも尋ねた上、道具屋にそれらも作るように言い渡したのだ。
これには、説明させられる凜花も作らされる道具屋も、さすがに参った。


とはいえ、そんなに簡単に完成するわけでもないため、ひとまずピーラーができるのを待ち、それから他の道具について相談することになった。
彼女は、ピーラーの完成を待ちわびている。
道具屋は困惑しながらも、大口の仕事だと喜んでいるようでもあった。


それに、凜花が話す調理器具に興味を示したのは風子だけではなく、料理係たちもみんな少しずつ興味を持ち始めた。
おかげで、いつしか自然と料理係たちと会話ができるようになっていた。
もっとも、風子がさりげなく凜花の話をみんなに聞こえるようにしていたことには気づいている。
仕事だけではなく会話のきっかけまで与えてくれた彼女には、感謝しかない。


「やはり、風子に頼んで正解だったな」

「うん。風子さんはもちろんだけど、聖さんのおかげだよ。本当にありがとう」


聖が瞳で弧を描く。