翌日も気が重かったが、会社に行かないわけにはいかなかった。
休みたくても人手不足のせいで有給は簡単にもらえない。
しかも、五歳で両親を亡くした凜花は、その後は児童養護施設で過ごし、十八歳で施設を出たのと同時に就職している。
つまり、最終学歴は高卒だ。


ハヤブサ便への就職は、高校と施設が連携を取って斡旋してくれたもの。
採用条件はいいとは言えなかったが、十八歳だった少女が今日までひとりでなんとか生きてこられたくらいの待遇ではある。
夜勤もあるものの、寮が完備されているため、家賃も安価だ。


身寄りもなく最終学歴が高卒の凜花を、今と同じかそれ以上の条件で雇ってくれる会社など、恐らくそうそうないだろう。
けれど、現状よりも給料が下がれば、生活はいっそう苦しくなる。
つらくても苦しくても、今の仕事を辞めるわけにはいかない。いつもと同じように出勤するしかないのだ。


幸い、仕事はシフト制のため、今日を乗り切れば明日と明後日は休みだ。
今日は茗子と同じシフトだが、来週はあまり被っていない。
そう思うとわずかに心が軽くなり、なんとか出社して黙々と業務をこなした。


今日は制服が破かれていることも、お弁当がコーヒー漬けにされることもなく、不気味なくらい平和だった。
茗子や彼女の取り巻きに業務のことで話しかけたときには無視されたが、それくらいのことならもうどうでもいい。
自分が業務の負担を被るだけで済むのなら、まだマシな方だ。


残業をするはめになると、所長には顔をしかめられたが、先にタイムカードを押してサービス残業にしておいた。
もちろん悔しいが、他に被害がなかっただけよかったと思うしかない。