凜花が天界に来てから一か月以上が経った。
その間に外に出たのは、街に下りた二回だけ。相変わらずひとりで外に出ることは叶わず、屋敷や庭で過ごす日々を送っていた。
天界に来る前なら、こんな生活には耐えられなかったかもしれない。
しかし、傍には常に桜火と蘭丸たちがいてくれる。だから、暇を持て余すようなことはなかった。
屋敷の中ではかくれんぼをしたり、庭に出ては花を愛でたり果実を食べたり。下界にいたときには考えられないような生活だったが、これが意外にも楽しかった。
テレビやネットどころか、スマホも天界では使えないと知って解約してきてしまったため、これまでに暇潰しとして使っていたものはなにもない。
それでも、そういったものを恋しいと思うこともなかった。
唯一、スマホがあれば……と思うことはあったが、ネット環境などない天界においては持っていてもおもちゃ同然である。
もともと友人がおらず、仕事以外で連絡を取るような相手もいなかった凜花にとっては、スマホもなければないで気にせずにいられるものだった。
「姫様―、聖様が帰ってきたです」
「お出迎えするです」
庭で蘭丸と菊丸と遊んでいたとき、ふたりが急になにかの気配を察するように笑い、玄関の方へと促した。
「蘭ちゃんと菊ちゃんって、聖さんが帰ってきたらすぐに気づくよね? どうして?」
蘭丸たちを追いながら、後ろから問いかけてみる。
「龍は気配でわかるです」
「主の気配は特にわかるです」
よくわからないが、龍同士だと感覚でわかるということらしい。
今度、聖か桜火に訊いてみようと考えると、前から彼が歩いてきた。
「ただいま、凜花」
「おかえりなさい。今日は早かったんだね」
「ああ、仕事が片付いたからな。たまには凜花とゆっくりしようと思って」
玄信から、聖がとても忙しい人であるということは聞いている。
そうでなくても、龍神である聖が普通の人よりもずっと多忙なのは、種族こそ違えどなんとなく理解はできる。
それなのに、こうして早くに帰ってきてくれて、自分と過ごそうとしてくれる気持ちが嬉しい。そう感じた凜花は、素直に笑みを零していた。
その間に外に出たのは、街に下りた二回だけ。相変わらずひとりで外に出ることは叶わず、屋敷や庭で過ごす日々を送っていた。
天界に来る前なら、こんな生活には耐えられなかったかもしれない。
しかし、傍には常に桜火と蘭丸たちがいてくれる。だから、暇を持て余すようなことはなかった。
屋敷の中ではかくれんぼをしたり、庭に出ては花を愛でたり果実を食べたり。下界にいたときには考えられないような生活だったが、これが意外にも楽しかった。
テレビやネットどころか、スマホも天界では使えないと知って解約してきてしまったため、これまでに暇潰しとして使っていたものはなにもない。
それでも、そういったものを恋しいと思うこともなかった。
唯一、スマホがあれば……と思うことはあったが、ネット環境などない天界においては持っていてもおもちゃ同然である。
もともと友人がおらず、仕事以外で連絡を取るような相手もいなかった凜花にとっては、スマホもなければないで気にせずにいられるものだった。
「姫様―、聖様が帰ってきたです」
「お出迎えするです」
庭で蘭丸と菊丸と遊んでいたとき、ふたりが急になにかの気配を察するように笑い、玄関の方へと促した。
「蘭ちゃんと菊ちゃんって、聖さんが帰ってきたらすぐに気づくよね? どうして?」
蘭丸たちを追いながら、後ろから問いかけてみる。
「龍は気配でわかるです」
「主の気配は特にわかるです」
よくわからないが、龍同士だと感覚でわかるということらしい。
今度、聖か桜火に訊いてみようと考えると、前から彼が歩いてきた。
「ただいま、凜花」
「おかえりなさい。今日は早かったんだね」
「ああ、仕事が片付いたからな。たまには凜花とゆっくりしようと思って」
玄信から、聖がとても忙しい人であるということは聞いている。
そうでなくても、龍神である聖が普通の人よりもずっと多忙なのは、種族こそ違えどなんとなく理解はできる。
それなのに、こうして早くに帰ってきてくれて、自分と過ごそうとしてくれる気持ちが嬉しい。そう感じた凜花は、素直に笑みを零していた。