料理は、まるで茶懐石のように次から次へと出てくる。
箸をつければどれもおいしくて頬が綻んだが、ひとつ食べれば次の料理が出てくるため、凜花は面食らった。


「これはなんの料理ですか?」

「ハクの実の煮つけだ」

「えっ? ハクの実の?」

「前にうちの庭に実ったものを食べたのだろう? ハクの実は天界では高価なものでな。こういった店でしか出てこない」


聖の屋敷には、ハクの木がたくさんある。
それこそ、蘭丸と菊丸はあの日以外にも何個も食べていたし、臣下たちも普通に口にしているようだったため、まさかそんな高級品だとは思いもしなかった。
そんなものに火を入れるなんて、とても贅沢なことではないのだろうか。


ハクの実の煮つけは、あの日食べたものとは全然違う。
生で食べたときには食感はりんご、味は桃のようだったが、これは煮込んだ大根のように口の中でとろけていった。
味付けも、醤油ベースに近い感じがする。
どちらもおいしいが、凜花は実をそのまま食べる方が好みだと思った。


その後も料理は出てくる雰囲気だったものの、お腹がいっぱいだと言って止めてもらった。
凜花よりもずっと小さい蘭丸と菊丸は、凜花の四倍以上は食べていただろう。
聖や玄信はそのさらに倍、桜火はふたりほどではないものの、蘭丸たちよりもたくさん食べていた。
普段は聖としか食事を共にしないからさして気にしていなかったが、龍というのはよく食べるのかもしれない。


「みなさん、よく食べられるんですね」

「龍は常に力を使うからな」

「力……?」

「ああ。俺たちの中には自然を凌駕するほどの力を持つ者もいる。そういう強い力を制御し続けなければいけない。そのためにも食欲は人間よりも遥かに多いだろう」

「蘭丸も強くなるです!」

「菊もです!」

「お前たちはまだまだだ。龍の姿で満足に飛ぶこともできないだろう」


聖と桜火が苦笑し、玄信が呆れたような顔をしている。