隣に並んだ聖と紅蘭は、とてもお似合いだった。
龍というのはみんな美しいのか、桜火も玄信も外見が整っている。ふたりの龍の姿は見たことがないが、蘭丸と菊丸も目鼻立ちがくっきりとしていて可愛い。


ただ、紅蘭の美しさは別格で、美麗な聖と並んでいても見劣りしないどころか、まるで恋人や夫婦のように見えた。
凜花なんかよりもずっと、ふたりの方がつがいらしいのではないのだろうか。
そう感じて、胸が軋むようにズキリと痛んだ。


「凜花?」

「え? あ、はい……。なんでしょうか?」


ハッとしたように顔を上げた凜花が落ち込んでいることを、彼はとっくに見抜いていたのだろう。
優しい面差しに困ったような笑みが浮かぶ。


「明日はまた街に行こうか」

「え?」

「あれから二週間も閉じこめたままにしてしまったからな」


聖は申し訳なさそうにしていたが、凜花は彼の真意をわかっている。
だからこそ、大丈夫と伝えるように首を横に振った。
大きな手が凜花の頭を二度撫で、聖が瞳をたわませる。


「それに、この間は街を回り切る前に戻ってきてしまっただろう。そのせいで茶屋くらいしか連れてやれなかったが、もっと奥の方には着物やかんざしを売っている店があるんだ。きっと、凜花に楽しんでもらえると思う」

「でも……」


凜花は戸惑った。
彼の気持ちは嬉しかったが、誘いを素直に受けていいのかわからなかったのだ。
聖が毎日ここに帰ってくるのは、凜花がいるから。そう知ったことにより、彼に余計な手間を掛けさせているのではないか……と不安だった。


「凜花に断られると、明日のために仕事を頑張っていた俺の努力が無駄になる。だから、俺に付き合ってくれないか?」


しかし、聖には凜花の懸念なんてお見通しのようで、笑顔を向けられてしまった。


「はい。ありがとうございます」


凜花はふっと笑みを零し、小さく頷いた。