天界での生活は、毎日が穏やかだった。
今のところ、凜花を狙う者がいそうな雰囲気はなく、聖が話していたような危険性はなさそうである。
もっとも、そう思うのは凜花が屋敷から一歩も出ていないからだろうけれど。
街に行った日からひとつ変わったことがある。それは、庭に出ると空を飛んでいく龍が見えるようになったことだった。
あの日、凜花の反応を見た彼が、龍の姿を見せても大丈夫だと判断したのだろう。
空高く舞うように行き交う龍は、相変わらず蝶々のようにも見えるし、鳥のように見えることもある。
ただ、間違いなく言えるのは、色とりどりの龍たちは美しいということ。
凜花は、ファンタジーの中にしか存在しない絵空事だと思っていた生物を見るたびに不思議な気持ちになったが、やっぱり怖くはなかった。
きっと、屋敷にいる臣下たちが親切だからに違いない。
ここには、凜花を疎ましがる者はいない。いじめる者も、邪険にする者も。
本心ではみんながどう思っているのかはわからないが、少なくとも桜火や蘭丸と菊丸からはそういった感情は伝わってこないし、とても大切にしてくれる。
それが聖の力のおかげだとしても、凜花にとって温かい環境に置いてもらえるというのは夢のようでもあった。
(でも、このままなにもしないでいるわけにはいかないよね……)
うっかり、ため息が漏れてしまう。
「お待ちください、紅蘭様!」
そんなとき、廊下の方から大きな声が聞こえてきた。
「許可を得た臣下以外の者が凜花様の部屋に近づくことは、固く禁じられております!」
自分の名前が出たことによって、凜花は何事かと身構えてしまう。
昼寝をしていた蘭丸と菊丸が目を覚まし、寝ぼけ眼で凜花を見る。
足音が近づいてきたが、傍にいた桜火が「大丈夫です」と優しい笑みで安心させてくれた。
「入るわよ」
ふすまが勝手に開く。
その向こうに立っていたのは、美しい女性だった。
今のところ、凜花を狙う者がいそうな雰囲気はなく、聖が話していたような危険性はなさそうである。
もっとも、そう思うのは凜花が屋敷から一歩も出ていないからだろうけれど。
街に行った日からひとつ変わったことがある。それは、庭に出ると空を飛んでいく龍が見えるようになったことだった。
あの日、凜花の反応を見た彼が、龍の姿を見せても大丈夫だと判断したのだろう。
空高く舞うように行き交う龍は、相変わらず蝶々のようにも見えるし、鳥のように見えることもある。
ただ、間違いなく言えるのは、色とりどりの龍たちは美しいということ。
凜花は、ファンタジーの中にしか存在しない絵空事だと思っていた生物を見るたびに不思議な気持ちになったが、やっぱり怖くはなかった。
きっと、屋敷にいる臣下たちが親切だからに違いない。
ここには、凜花を疎ましがる者はいない。いじめる者も、邪険にする者も。
本心ではみんながどう思っているのかはわからないが、少なくとも桜火や蘭丸と菊丸からはそういった感情は伝わってこないし、とても大切にしてくれる。
それが聖の力のおかげだとしても、凜花にとって温かい環境に置いてもらえるというのは夢のようでもあった。
(でも、このままなにもしないでいるわけにはいかないよね……)
うっかり、ため息が漏れてしまう。
「お待ちください、紅蘭様!」
そんなとき、廊下の方から大きな声が聞こえてきた。
「許可を得た臣下以外の者が凜花様の部屋に近づくことは、固く禁じられております!」
自分の名前が出たことによって、凜花は何事かと身構えてしまう。
昼寝をしていた蘭丸と菊丸が目を覚まし、寝ぼけ眼で凜花を見る。
足音が近づいてきたが、傍にいた桜火が「大丈夫です」と優しい笑みで安心させてくれた。
「入るわよ」
ふすまが勝手に開く。
その向こうに立っていたのは、美しい女性だった。