そして、紅蘭自身は人間の血が混じっていても堂々としているようだった。
それを聞いたときから、凜花は彼女に対して少しだけ親近感を抱いていたのだ。


「……なによ? 私に人間の血が流れているのがおかしい?」

「いいえ、ちっとも。今度、紅蘭さんのおばあ様にも会わせてください」

「嫌よ。それでなくても、おばあ様は聖のつがいが人間だと知ったときから大喜びしていたのに、あんたと会ったら手がつけられないほど喜ぶに決まっているもの」

「ダメですか?」

「……気が向いたら考えておく」


聖が小さく噴き出し、凜花もクスクスと笑う。


「紅蘭様、姫様には敵わないです」

「姫様はすごいお方です。ね、桜火様、玄信様」

「ええ、そうですね」

「我が主が選ばれたお方ですから当然だ」


蘭丸と菊丸の言葉に照れくさくなった凜花だが、桜火と玄信にまで褒められて心がむずがゆくなってしまう。
褒められることに慣れていないせいで、途端に頬が真っ赤になった。


「こら、凜花。俺以外の者の前で頬を染めるな。お前が顔を赤くしていいのは、俺とふたりきりのときだけだ」


その上、聖に無茶な注文までつけられて、凜花は首まで朱に染まっていった。


「まったく、可愛いつがいだ」


彼の瞳が緩められ、凜花の頬にくちづけが落とされる。


「ひ、聖さん……! みなさんがいるんですよ!」


驚く凜花だったが、聖は艶麗な笑みを向けてくる。


「心配するな。玄信と桜火は優秀な臣下だ」


玄信と桜火を見ると、ふたりはそれぞれ蘭丸と菊丸の目を覆いながら素知らぬ顔をしていた。紅蘭だけは呆れたようにため息をついている。


「蘭も見たいです!」

「菊もです!」

「お前たちにはまだ早い。私に勝てたら見せてやろう」


騒ぎ出す蘭丸と菊丸は、玄信の言葉に膨れっ面をする。
まごつく凜花に、聖がククッと笑った。


そのまま今度は唇を奪われたが、優しいキスに胸の奥が高鳴ってしまう。
凜花は、柔らかな幸福感に包まれながら、うっとりと瞼を閉じた。