お祝いラッシュが落ち着いた頃、紅蘭がやってきた。
彼女とは、火焔のことで責められた日以来ずっと会っていなかったため、凜花の中にはいささか気まずさがあった。


「あんた、本当に聖とつがいの契りを交わしたのね」


ところが、紅蘭の方は言い方こそきついものの、以前ほどの冷たさはなかった。


「はい」

「そう」


彼女は祝福の言葉は口にしなかったが、かといって凜花に突っかかる気もないようだった。


「火焔からみんなを庇ったんですって?」

「え? い、いえ……私はそんな……」


確かに、菊丸を返してもらうため、自分の身を差し出した。
しかし、結果的には火焔の炎に包まれただけで、なにもできなかった。
聖が来てくれなければ、あのままどうすることもできなかっただろう。


そんな気持ちから、凜花は戸惑いがちにかぶりを振ったけれど……。

「龍相手にやるじゃない」

紅蘭はつっけんどんに言い、微かに笑みを見せた。


「紅蘭さん……」

「……悪かったわ。あんたのこと、気に入らなかったのもあるけど、あんたなんかに聖のつがいが務まるはずがないって思っていたの」

「はい」

「でも、今は……ちょっとだけ、そうでもないのかなって思うわ。言っておくけど、本当にほんのちょっとだけだから!」


プライドが高いであろう彼女にとって、それは全力の謝罪だったのかもしれない。
大人に見えていた紅蘭が可愛く思えて、凜花はつい笑ってしまった。


「ちょっと、笑わないでよ」

「紅蘭こそ、それで謝っているつもりか?」

「聖に関係ないでしょ。これは女同士の話なのよ」


黙って聞いていた聖が見兼ねて口を挟んでも、彼女はフンッと彼から顔を逸らす。


「紅蘭さん」

「なによ」

「私は、凜さんのようにはなれないと思います。私は私だし、魂がどうであっても凜さんの真似をしようとも思わないから」

「……それで?」

「でも、いつかもし心から認めてくれたら、お友達になってください。私、ひとりも友達がいないので」

「は?」


眉を寄せた紅蘭に、凜花は苦笑を零す。