聖は、真っ先に凜花の傷を治した。
「すまない……。駆けつけるのが遅くなった上、守るどころか俺が傷つけた……」
罪悪感を滲ませる彼に、凜花はあっけらかんと笑ってみせる。
「平気だよ。もうちっとも痛くないし、聖さんがすぐに炎を消してくれたから着物が焼けただけだったし」
「だが……」
「ほら、聖さん。みんなのことも治してあげて」
「あ、ああ……」
明るく背中を押す凜花に、聖は戸惑いを見せながらもこの場にいる者たちの傷を治していく。
菊丸、玄信、桜火、そして複数の臣下たち。
聖がひとり残らず手当をすると、みんなが深々と頭を下げた。
「聖様、申し訳ございません! 姫様をお守りするどころか足手纏いに……!」
「本当に申し訳ございません! 私はお世話係失格です……」
「ごめんなさいです……」
玄信、桜火、菊丸に続いて臣下たちも次々に謝罪を紡ぐ。
「もういい。俺もすぐに駆けつけてやれなかった。よく耐えてくれた」
「聖様……」
玄信は眉を下げ、後悔を滲ませながら凜花を見た。
「姫様!」
「は、はい……」
真っ直ぐ見つめられて、凜花はたじろぎそうになる。
けれど、その視線を受け止め、凜花も彼を見据えた。
「先日のご無礼をお詫びいたします!」
なにを言われるのかと身構えたとき、玄信が土下座をした。
「え……?」
「どういうことだ、玄信」
聖の鋭い視線が、玄信を射抜く。
玄信は、意を決したように口を開いた。
「はい……。私は先日、おこがましくも姫様に進言いたしました。聖様のつがいになる覚悟がないのなら、天界を去ることもお考えください……と」
「おい、玄信――」
「待って!」
怒りをあらわにした聖を止めた凜花が、彼を見つめて首を横に振る。
「玄信さん」
凜花は地面に両膝をつき、玄信に笑みを向けた。
「謝らないでください」
「し、しかし……」
「あのとき、玄信さんが聖さんを思ってあんな風に言ってくださったことだとわかってます。それに……」
凜花は息をゆっくりと吐くと、迷いのない瞳を見せた。
「私は、玄信さんのあの言葉があったからこそ、自分の本心がわかりました」
「え?」
「でも、この先は聖さんにだけ伝えたいんです。だから、ふたりだけにしていただけませんか?」
凜花の力強い声音に、玄信と桜火、聖までもが目を見開く。
「……御意」
玄信は頭を深々と下げると、瞳をそっとたわませた。
それは彼が凜花に初めて見せる、優しい笑顔だった。
「聖様、お叱りはあとでお受けいたします」
「……ああ。覚悟しておけ」
そう言った聖の声に厳しさはなく、彼がもう怒っていないことが伝わってくる。
凜花が安堵する中、玄信たちは火焔を連れて去っていく。
咲いていた花がまばらになった丘には、聖と凜花のふたりだけが残った。
「すまない……。駆けつけるのが遅くなった上、守るどころか俺が傷つけた……」
罪悪感を滲ませる彼に、凜花はあっけらかんと笑ってみせる。
「平気だよ。もうちっとも痛くないし、聖さんがすぐに炎を消してくれたから着物が焼けただけだったし」
「だが……」
「ほら、聖さん。みんなのことも治してあげて」
「あ、ああ……」
明るく背中を押す凜花に、聖は戸惑いを見せながらもこの場にいる者たちの傷を治していく。
菊丸、玄信、桜火、そして複数の臣下たち。
聖がひとり残らず手当をすると、みんなが深々と頭を下げた。
「聖様、申し訳ございません! 姫様をお守りするどころか足手纏いに……!」
「本当に申し訳ございません! 私はお世話係失格です……」
「ごめんなさいです……」
玄信、桜火、菊丸に続いて臣下たちも次々に謝罪を紡ぐ。
「もういい。俺もすぐに駆けつけてやれなかった。よく耐えてくれた」
「聖様……」
玄信は眉を下げ、後悔を滲ませながら凜花を見た。
「姫様!」
「は、はい……」
真っ直ぐ見つめられて、凜花はたじろぎそうになる。
けれど、その視線を受け止め、凜花も彼を見据えた。
「先日のご無礼をお詫びいたします!」
なにを言われるのかと身構えたとき、玄信が土下座をした。
「え……?」
「どういうことだ、玄信」
聖の鋭い視線が、玄信を射抜く。
玄信は、意を決したように口を開いた。
「はい……。私は先日、おこがましくも姫様に進言いたしました。聖様のつがいになる覚悟がないのなら、天界を去ることもお考えください……と」
「おい、玄信――」
「待って!」
怒りをあらわにした聖を止めた凜花が、彼を見つめて首を横に振る。
「玄信さん」
凜花は地面に両膝をつき、玄信に笑みを向けた。
「謝らないでください」
「し、しかし……」
「あのとき、玄信さんが聖さんを思ってあんな風に言ってくださったことだとわかってます。それに……」
凜花は息をゆっくりと吐くと、迷いのない瞳を見せた。
「私は、玄信さんのあの言葉があったからこそ、自分の本心がわかりました」
「え?」
「でも、この先は聖さんにだけ伝えたいんです。だから、ふたりだけにしていただけませんか?」
凜花の力強い声音に、玄信と桜火、聖までもが目を見開く。
「……御意」
玄信は頭を深々と下げると、瞳をそっとたわませた。
それは彼が凜花に初めて見せる、優しい笑顔だった。
「聖様、お叱りはあとでお受けいたします」
「……ああ。覚悟しておけ」
そう言った聖の声に厳しさはなく、彼がもう怒っていないことが伝わってくる。
凜花が安堵する中、玄信たちは火焔を連れて去っていく。
咲いていた花がまばらになった丘には、聖と凜花のふたりだけが残った。