身が焼かれるように熱い。
咳き込んで呼吸が上手くできず、汗が滝のように流れていた。


(ダメ……もう、意識が……)


必死に立っていた凜花だったが、思考がぼんやりとしていき、それとともに膝から力が抜けていく。


もう目を開けている気力も失いかけ、瞼を閉じたとき。

――火焔を……火焔を救ってあげて。

悲しみに満ちた声が、凜花の鼓膜を揺らした。


「りん、さん……」


この声を知っている。
夢の中でも、火焔に最初に会ったときにも、凜花に語りかけてきた。
朦朧とする意識の中、凜花は両手をついて四つん這いの体勢になる。


「火焔……」

「どうだ、俺の炎の味は? ラクに死なせてやるものか。じわじわといたぶって、聖が来たら一気に焼いてやる」


憎しみがこもった言葉が、やけに悲しかった。
あんなに恐怖心を抱いていたのに……。かわいそうな人だ、と思った。


「あなたは……凜さんが好き、だったんだよね……? 聖さんとは、幼なじみで……親友で……」

「聖から聞いたのか?」

「今でも苦しいの……?」

「苦しい、だと?」


ぜえぜえと息をする凜花は、もう話すのは限界だった。
煙を吸いすぎたせいか、意識を保てそうにない。


「そんな生温い感情じゃない!」


けれど、火焔の言葉を聞こうと、必死にこぶしを握る。


「俺には幼い頃から凜しかいなかった。凜も俺を好いていてくれたはずだった……。それなのに、あいつは……!」


龍にとって、つがいとは唯一無二の存在。
凜が好意を持っていたとはいっても、恋愛感情ではなく火焔自身に対して友人として好きだった……ということだろう。


「つがいがどういうものか、俺も龍だから知っている。それでも、俺が龍神になれば凜が振り向いてくれるかと思った。だが……」


恐らく、火焔は聖に敵わなかったのだろう。
龍の力でも、ひとりの男性としても……。