残りも四日目となると、ブラックホールは随分大きくなり、小さな豆だったそれが今では学校ほどの穴になっていた。

 深淵をのぞく時、深淵もまたこちらを覗いている。なんて言葉を思い出す。きっともうすぐ見えるのだろう。その深淵が。

 私は窓を閉め、カーテンも閉めて、ももんが眠る足元を静かに歩いて、こいるの寝ているリビングに辿り着き、小さなボリュームでテレビを付けた。

 久々に見たテレビはやはりブラックホールのことを報道していて、どこかの外国が一番最初に被害を受けたらしく、上部がない建物が映されていた。

 その町には既に人はおらず、皆出来るだけ遠くへ逃げたのだと言う。その中でもこの町で死にたいと言う一人の男性をインタビューしているようで、彼は大きな木の下にもたれかかって、こちらを覗くような視線を向けてきた。

「ここは生まれ育った場所だからね。思い出も宝物も全部ここにあるんだ」
「娘たちは遠くの町へ逃げてったよ。彼女たちの判断を責めるつもりはない」
「最後はここで死ぬ。そう決めていたんだ」