翌朝、私たちはうだる暑さの中、学校へ向かう。
 残り二日前。風が強く、町は荒れ放題。木の葉は飛び交い、木々は軽いものなら抜けて横たわっている。瓦礫が落ちたのか、屋根の素肌が見えている家もあった。

 風……地球は、物質は、皆ブラックホールに呑まれそうになっている。空に出来た大きな穴はぐるぐると渦巻き、絶えず何かを取り込んで、より大きくなって、けれどその奥はやはり見えない。底知れない恐怖にあちこちで悲鳴が上がり、私も、恐くてたまらない。
 空は、もう遠くの方にしかない。

「地球滅亡がそこまで来てるってのに、俺たちは呑気だよな」

 横に並ぶ恋人の声に、私は力無く笑う。

「呑気にしてなきゃ、恐くて」
「……うん、そうだな。結婚するんだ、浮かれるくらいがいいだろ」

 手に温もりが加わり、力強い笑顔を向けてくるとその手を振り上げ、ブラックホールへ宣戦布告のように突き出した。

「幸せになってやる」