にやにやしながら欄悠が顔を近づけてくる。紅華は、ぎゅ、と唇を引き結んで思い切りのけぞった。
ごっ!!
「痛てえ!!」
口づけようと近づいた欄悠に、紅華は反動をつけて頭突きをくらわした。欄悠がひるんだすきに紅華は掴まれた手を振り回して、二人は長椅子から転げ落ちる。紅華は、素早く立ち上がった。
「力づくで女をものにしようなんて最低! あんたのことなんて何とも思ってないって言ったけど訂正するわ。あんたなんか大っ嫌い!!」
威勢よく言ってのけるが、額をぶつけた紅華も少し涙目になっている。
「ああ? せっかく俺が優しくしてやったのに……!」
額を押さえながら、欄悠がふらふらと立ち上がった。慌てて紅華は、部屋を出ようと扉に走る。
「どこが優しいのよ! 変態!」
扉を開けようとした瞬間、追いかけてきた欄悠が紅華の袖をつかんだ。
「きゃっ!!」
そのまま、紅華は床へと引き倒される。
「痛っ!」
「下手にでりゃふざけた真似しやがって!」
「何されたって、絶対あんたなんかに屈服したりしない! 蔡家の財産だって、あんたの好きになんてさせないから!」
もつれた髪を引っ張られて、紅華は仰向かされる。欄悠は、ぎらぎらした目で紅華を見下ろした。
「それだけじゃないんだよ」
「え?」
欄悠が紅華の細い首に片手をかけた。命の危険を感じた紅華は、息を飲んで動きを止める。
「お前に貴妃の役目を果たされては……皇帝に、今、跡継ぎなんか作られては困るんだよ」
「……どういうこと?」
おとなしくなった紅華に満足したのか、欄悠は得意げに話し始めた。
「今上皇帝に何かあれば、次に皇帝になるのは第二皇子の慶朴だ」
それを聞いて、は、と紅華は気づいた。にやりと欄悠が笑う。
「わかっただろう? 慶朴の母親は、元淑妃。つまり俺の姉だ。そういうことだよ」
「まさか、皇帝陛下を狙っていたのは……」
「おっと。うかつなことは言わないほうがいいぜ」
欄悠は、紅華の首にかけた手に力をこめる。苦悶の表情を浮かべた紅華の頬に、欄悠が舌をはわせた。
「嫌っ……! 離してっ!」
「心配しなくても、殺しはしない。お前にはまだ、蔡家の一人娘としての利用価値があるからな。最初の予定通り、うちの嫁としてたっぷり可愛がってやる。このままこの部屋に閉じ込めて、何回も、何日も抱いてやる。そうすれば、万が一お前がすでに身ごもっていたとしても、生まれてくるのは俺の子として周囲に認知されるだろう。皇帝の血を継ぐ子供はいなくなって俺の甥は皇帝となり、蔡家だってあきらめて結婚を許す。一挙両得って寸法だ」
「誰が……あんたなんか……」
苦しい息の中から言うが、かといって体重をかけられている今の状況では見動きすらできない。
(誰か……助けて…………天明様!)
こんこん。
その時、扉を叩くものがあった。紅華の喉もとを押さえたまま、欄悠はいぶかしげに顔をあげる。
「誰だ?」
「欄悠様、至急のご使者がお見えになっております」
淡々とした男の声に欄悠が気をそらしたすきに、紅華は欄悠の手をはねのけようとする。が、欄悠は、さらに強く紅華の首を床へと押し付けた。
『……っ……』
「使者? ああ、向こうはうまくいったんだな。待たせておけ。今は手が離せない」
ごっ!!
「痛てえ!!」
口づけようと近づいた欄悠に、紅華は反動をつけて頭突きをくらわした。欄悠がひるんだすきに紅華は掴まれた手を振り回して、二人は長椅子から転げ落ちる。紅華は、素早く立ち上がった。
「力づくで女をものにしようなんて最低! あんたのことなんて何とも思ってないって言ったけど訂正するわ。あんたなんか大っ嫌い!!」
威勢よく言ってのけるが、額をぶつけた紅華も少し涙目になっている。
「ああ? せっかく俺が優しくしてやったのに……!」
額を押さえながら、欄悠がふらふらと立ち上がった。慌てて紅華は、部屋を出ようと扉に走る。
「どこが優しいのよ! 変態!」
扉を開けようとした瞬間、追いかけてきた欄悠が紅華の袖をつかんだ。
「きゃっ!!」
そのまま、紅華は床へと引き倒される。
「痛っ!」
「下手にでりゃふざけた真似しやがって!」
「何されたって、絶対あんたなんかに屈服したりしない! 蔡家の財産だって、あんたの好きになんてさせないから!」
もつれた髪を引っ張られて、紅華は仰向かされる。欄悠は、ぎらぎらした目で紅華を見下ろした。
「それだけじゃないんだよ」
「え?」
欄悠が紅華の細い首に片手をかけた。命の危険を感じた紅華は、息を飲んで動きを止める。
「お前に貴妃の役目を果たされては……皇帝に、今、跡継ぎなんか作られては困るんだよ」
「……どういうこと?」
おとなしくなった紅華に満足したのか、欄悠は得意げに話し始めた。
「今上皇帝に何かあれば、次に皇帝になるのは第二皇子の慶朴だ」
それを聞いて、は、と紅華は気づいた。にやりと欄悠が笑う。
「わかっただろう? 慶朴の母親は、元淑妃。つまり俺の姉だ。そういうことだよ」
「まさか、皇帝陛下を狙っていたのは……」
「おっと。うかつなことは言わないほうがいいぜ」
欄悠は、紅華の首にかけた手に力をこめる。苦悶の表情を浮かべた紅華の頬に、欄悠が舌をはわせた。
「嫌っ……! 離してっ!」
「心配しなくても、殺しはしない。お前にはまだ、蔡家の一人娘としての利用価値があるからな。最初の予定通り、うちの嫁としてたっぷり可愛がってやる。このままこの部屋に閉じ込めて、何回も、何日も抱いてやる。そうすれば、万が一お前がすでに身ごもっていたとしても、生まれてくるのは俺の子として周囲に認知されるだろう。皇帝の血を継ぐ子供はいなくなって俺の甥は皇帝となり、蔡家だってあきらめて結婚を許す。一挙両得って寸法だ」
「誰が……あんたなんか……」
苦しい息の中から言うが、かといって体重をかけられている今の状況では見動きすらできない。
(誰か……助けて…………天明様!)
こんこん。
その時、扉を叩くものがあった。紅華の喉もとを押さえたまま、欄悠はいぶかしげに顔をあげる。
「誰だ?」
「欄悠様、至急のご使者がお見えになっております」
淡々とした男の声に欄悠が気をそらしたすきに、紅華は欄悠の手をはねのけようとする。が、欄悠は、さらに強く紅華の首を床へと押し付けた。
『……っ……』
「使者? ああ、向こうはうまくいったんだな。待たせておけ。今は手が離せない」