汚い言葉を浴びせられ、精神的に追い詰められ、部活を辞めた。
 同じサッカー部の仲間も、クラスの連中さえも離れていって、俺の居場所はなくなった。

 毎朝起きると吐きそうで、学校なんて行きたくなかった。
 それでも親には言えず、仕方なく入った校舎で、あの絵を見かけたんだ。

 透明な水しぶきを上げる噴水と、その前で笑っている子どもたちの絵。
 その絵を見た瞬間、なぜだか涙がぼろぼろこぼれた。
 純粋にボールを蹴っていたころの記憶が、蘇ったからだろうか。

 それから毎朝、絵を見るためだけに、学校に通った。
 あの絵に出会わなければ、俺はとっくに学校なんか辞めていた。
 そしてあの日、俺は彼女を見つけたんだ。

 手を伸ばし、部屋にあったサッカーボールに触れてみる。

『あなたの好きなものを見てみたい』

「俺の好きなものか……」

 久しぶりに、ボールを軽く蹴飛ばしてみる。
 だけど思いのほか強かったらしく、壁にぶつかり大きな音を立てた。

「ちょっと青慈ー! なにやってんの? 早くしないと遅刻するよー」

 部屋の外から聞こえる母親の声。

「わかってるー」

 俺はそう答え、拾ったボールをもう一度壁に蹴飛ばした。