『うぜぇんだよ、青慈』
『さっさと消えろ』

 言葉が鋭い棘になって、心臓に突き刺さる。
 目を開けて、ああ夢かってホッとして、でも現実も変わらないって気づいて、あきらめる。

 のろのろと制服に着替えていると、部屋の隅に置いてあるサッカーボールが目についた。

 小学生からはじめたサッカー。中学校でサッカー部に入って、高校でも迷わずサッカー部に入部した。
 仲間とも先輩ともうまくいっていて、好きなサッカーができて、女の子にもちょっとモテて、俺の高校生活は順調だった。
 順調すぎるくらいだった。

 だけどたぶん他人から見たら、調子こいた嫌なやつだったんだと思う。
 些細なことで先輩を怒らせてしまってから、コインが裏返るみたいに、ありふれた日常がぐるりとひっくり返った。