「きゃっ」
「は、早く飲んで!」

 思わず叫ぶと、茉白があわてて瓶に口をつけた。
 ラムネをこぼしながら、必死に飲んでいる姿がかわいい。

「どう?」
「う、うん。すごくシュワシュワする」

 思わず、あははっと笑ってしまったら、茉白はすねたように口をとがらせる。

「あーあ、びしょびしょになっちゃった」

 だけどすぐに茉白も、声を立てて笑いだした。

「でも甘くて、おいしいね」
「うん」

 木漏れ日の差すベンチに並んで、爽やかなラムネをふたりで飲んだ。
 ビー玉と、ガラス瓶がぶつかりあって、カラコロと澄んだ音を立てる。

 淡いブルーの瓶の中、透明な泡が浮かんでは、儚く消えた。
 明日になれば消えてしまう、茉白の記憶みたいに。

「茉白さん、なにか欲しいものとか、好きなものとかある? また来週持ってきてやるよ」

 茉白は少し考えて答える。

「あなたの好きなものは?」
「え?」
「あなたの好きなものを見てみたい」

 俺の好きなもの?

「そんなんでいいの?」

 茉白がうなずく。

「じゃあ……考えておく」

 そう言って俺は立ち上がった。噴水に西日が当たって、金色に光っている。

「また来週も、会いにくるよ」

 茉白はちょっと悲しそうに微笑んだ。