「今日はこれ、買ってきたよ」

 俺は近所の駄菓子屋で手に入れた、二本のラムネの瓶を見せる。
 茉白は不思議そうな顔つきでそれを眺める。

「飲んでみたかったんだろ?」

 戸惑うように視線を泳がせ、茉白は薄い唇を開いた。

「私……そう言ったんですか? あなたに」
「うん。話してくれた。最近炭酸にはまってるんだけど、ラムネは飲んだことないから飲んでみたいって」

 だから俺が「来週買ってきてやるよ」って約束したんだ。

 茉白の手にラムネ瓶を持たせる。
 キンキンに冷えたやつを買ってきたから、まだひんやりと冷たい。
 暑さのせいで、瓶が汗をかいている。

「これ……どうやって開けるの?」
「教えてあげるよ」

 俺はフィルムをはがして玉押しを取りだし、瓶の口に当てる。

「行くよ。見てて」

 ぐっと力を入れて押し込むと、カコンッと音を立ててビー玉が落ち、シュワシュワと泡が浮き上がってくる。

「うわぁ……」

 茉白は感心したように目を丸くした。

「やってみて」
「できるかな」

 茉白がおそるおそる玉押しを押し込んだ。
 しかしすぐに手を離してしまったせいか、泡が噴きだし、瓶を伝って膝の上にこぼれ落ちる。