「えっと、俺……あの絵に、ひとめぼれしてしまって」
「ひとめぼれ?」
「はい。俺、サッカー部だったんだけど、いろいろあって辞めちゃって……学校行きたくねぇなーって思ってたときに、あの絵を見かけたんです。そしたらなぜか、その、泣けてきて……それで次の日からは、絵を見るためだけに、学校行くようになったっていうか……」

 すると茉白が目を見開き、大げさなくらい首を横に振った。

「私……そんなにすごいものを描いた覚えは……」
「いやっ、すごいです、マジで! 美術に全く興味なかった俺が、一枚の絵を忘れられなくなっちゃうなんて……で、この絵を描いた人って、どんな人なんだろうってずっと気になってたんです。名前と学年が書いてあったから、三年生の教室行ってもよかったんだけど、俺、先輩に目つけられてて無理なんで」

 茉白がぷっと噴きだして笑う。いや、笑い事ではなく、本当なんだよ。

「それでここに?」
「なんとなく、絵の場所に行けば会えるような気がして……」

 町中の噴水のある場所を歩き回って、やっとここにたどり着いた。

「……キモいですかね?」
「いえ……」

 茉白がくすくすと、澄んだ声を立てて笑う。
 髪も瞳も色素が薄くて、なんだか儚げな人だなぁって思った。