「教えてもらえますか? あなたのこと」

 ぽろっとこぼれた俺の涙が、スケッチブックの上に落ちた。
 ごしごしと目元をこすって、まっすぐ茉白の顔を見つめる。

「何回でも教えます」

 茉白の瞳に俺が映る。

「俺、羽野青慈っていいます」

 透けるような茶色い髪が、真夏の風にさらりと流れる。

「好きなものはサッカーと……森園茉白さんです」

 茉白の頬が赤くなり、泣きそうな顔で微笑んだ。
 そんな君に、何回でも何百回でも、この言葉を伝えよう。

「俺は、あなたのことが……茉白さんのことが大好きです」

 高く噴きあがった水しぶきが、風になびいて虹を作る。
 透明なしずくは空ではじけて、夏のにおいの中に消えていった。