「茉白さんもやってみる?」

 鉛筆を持ってこっちを見ていた茉白が、驚いたように首を振る。

「わ、私は無理」
「教えてあげるよ」
「い、いえっ、私は見てるだけで十分だから」

 ビビっている茉白がかわいくて、俺は笑った。

「お兄ちゃん、やり方教えて」
「いいよ」

 子どもたちに手を引かれながら、ちらっと茉白を見る。
 茉白はベンチに座ったまま、にっこりと微笑む。

「じゃあ、茉白さんは、そこで見ててよ」

 茉白がおだやかにうなずいた。

 いいんだ、きっと。茉白が笑っているから、俺も笑っていいんだ。
 水しぶきが飛び散る噴水の前で、俺はボールを高く蹴り上げた。