冒険者プレート・プラチナ。
ゴールドの上であるこのカラーは、最上級という意味でもあり。これ以上の強さを測れないという意味でもある。
数字で例えると。
1~100まではブルーからゴールド。
それ以上は200でも500でも、1000でも全部プラチナ認定だ。
まぁそもそも……、プラチナランクの実力者なんて世界有数だ。500だろうが1000だろうが、この数字以上の者は、『とてもすごい』のカテゴリに入ってしまうのである。
現在世界中を探しても、十人しか居ないとされているが……、
「ここに一人増えちゃったじゃん!」
世界有数の一人になってるじゃん、俺。
え、何? どういうこと……?
「ねぇねぇおにいちゃん」
俺が困惑していると、ヒナが横合いから質問をしてきた。
「よくわからないんだけど。これでおにいちゃんは、一番すごい冒険者? になれたってことなの? 一番上のランクってことなのかな」
「いや……、えっと。このプレートは強さを表すだけのものだから、ランクとはまた違うんだよ」
「ふうん? そうなんだ?」
うん。たぶんよく分かってない表情だ。
ただ、ヒナの疑問ももっともかもなぁ。俺も冒険者を目指す前は、よく混同していたものだ。
他の二人も同様に首をかしげていることだし。自身を落ち着けるためにも……、うん、ちょっと説明しておこう。
「えー……、まず。冒険者には二つの評価基準があってさ。
一つは強さ。もう一つは実績。この二つでだいたい語られることが多いんだ」
この二つは、同時に上昇していくというわけではない。
まぁ考え方自体は簡単だから、慣れてしまえば楽だ。
「まず俺、ドリー・イコンは、C級冒険者だ」
「その、『きゅう』っていうのは、強さじゃないのかゴシュジン?」
「『級』または『ランク』は、実績だな。
どういうクエストをこなしたかとか、どんなダンジョンをクリアしたかとか、そういう評価の部分」
その冒険者の信用度というか、地位というか。
新人の等級はFランクから始まるのだが。例えばデビューでいきなりAランクのダンジョンをクリアしたら、AとかBランクの冒険者へと一気にレベルアップすることが出来る。
評価が高くなっていけば、自分からクエストを受けにいかなくても、国お抱えの案件などから声がかかってきたりとか、いろいろと有利に働いたりもするのだ。
「評価は、案件の管理をしてる冒険者ギルドがくだす。
詳細は省くけど、Bランクのクエストをクリアしたって報告を入れたら、その分評価値が上がるって感じだ」
「ふぅん? じゃあゴシュジンが、仮にこのクエストをクリアしたら、ランクが上がるのか?」
「そうだな。たぶんBランクかC+ランクくらい……にはなるんじゃないかな?」
「じゃあ今からでも上を目指すか?」
「いや……、とりあえず俺は、今はこのダンジョンを去りたいかな」
精神衛生上というか。
さすがにそこまで切り替えが早い方ではないので。
「それに俺は、万年Cランク冒険者に慣れっこなんだ。
今のままでも生活は回ってたから、そこまで稼がなくてもいいかな」
まぁこいつらと一緒にいるのであれば、そこらへんも再考した方がいいかもしれないけど。
とりあえず現状としては、このダンジョンはクリアに向かわなくていいかなと思う。
「話を戻すけど。
次に強さの方だ。これを図るのが、冒険者が身に着けておかなきゃならない『冒険者プレート』なんだ」
言いながら俺は、首から下げてる――――ついさっきからプラチナに輝き出したプレートを取り出した。
薄く小さいプレートだが、プラチナに光ればやはり存在感がある。他の色はここまで輝いたりはしないからな……。
「って、あれ?」
「あら、黄色に変化しましたわね」
「黄色ってことは……、元の強さだな」
見間違いだったのかと一瞬考えたが、俺以外にも三名目撃しているのだ。流石に全員勘違いってことは無いだろう。
「よく分からないけど、一瞬だけ何かが原因で、誤判定したのか……な?」
「そういうことってあるんですの?」
「いや……、聞いたことは無いんだけど……」
確認のために身体を軽く動かしてみる。
しかし、やはり前までの状態とほとんど変わっていない。強い魔法も使えないみたいだし。
ちょっと残念な気もするが……、ややほっとしている自分もいる。
力を持つのはいいけど、上手く使えるか分からないからなぁ。これで良かったのかもしれん。
「それじゃあ変わらず、ゴシュジンのことはベルたちが守るぞ!」
「うん! おにいちゃんは後ろで見ててくれれば良いからね!」
うん。優しさが痛いときってあるよね。
事実なんだけど、幼女の姿をした子らに言われると、刺さるものがあるというか。
「と……とにかく。冒険者には、『強さ』と『実績』の二つがあるってことだ。
強いからと言って必ずしも冒険者ランクが高いってわけじゃないし、高ランク冒険者でも青プレートもいるってこと」
とても極端なことを言えば。プラチナプレートでもEランク、Fランクの冒険者が存在する可能性だってあるのだ。
まぁ……、結局俺の強さがどうなってるのかは分からず仕舞いだったけどな。
けれどこの感じだと、たぶん変わってないんだろう。
そういう風に区切りをつけ、気持ちを仕切り直す。
「よし……。今の時間で、休憩も十分っぽいわ。ありがとな」
言いながら俺は重い腰を起こす。
その後も、ダンジョンの下層に降りるまで。
俺はこの子らの後ろにいるだけだった。
いやほら……、適材適所的な意味で、ね?