「母娘だから、というより……やっぱり、血筋だねぇ」
明夜は、微笑みながら衣夜の方をちらりと見た。
羚と父は、全くもって明夜の言っていることが分からなかった。
それを読み取ったのか、衣夜が訝しげに父である明夜の方を見た。
「お父様。お二人に、説明はしたのですか?」
「いや、まだだよ。蓮殿へは、今後の話もあるからその時にしようかと思っているけど。羚君へは、衣夜がした方がいいんじゃないと思ってね」
明夜の言葉に、衣夜は、はあ、と小さくため息を漏らした。
「分かりました。では、羚様。私に着いてきて下さい」
「は、はい……」
部屋を出た二人を見送った明夜と連。
「それで、明夜様。その説明とは……?」
「ああ。それはですね───」
♢♢♢
───狐輪家の娘は、一定の年齢を迎えると、運命の相手に巡り会う事が出来る。
それは、平安の世から伝え継がれてきたとされるもの。
狐輪家には男児が生まれず、何故なのかと当時の当主夫妻は疑問に思い、神主に助言を頼んだ。
「これから先も男児が生まれることはないだろうが、心配することはない。何故なら……その娘たちは必ず、運命の相手を婿として迎え入れるだろう」
そしてその言葉通り、狐輪家に生まれてきた娘は婿を迎え入れてきた。
──本当に、言い伝え通りなのかしら……。
十六歳を迎えたばかりの衣夜は、内心その言い伝えを疑っていた。
衣夜の母も、言い伝え通りに父と出会ったらしいのだが、たまたまではないかと思っている。
祖父母やその前の人達の事は、誰にも分からない。知っているのは本人達だけだ。
だから、どうにも腑に落ちない。
「衣夜ちゃん」
声のする方を見ると、短く綺麗な白銀の髪に碧い瞳。一見すれば少女にも見える、とても可愛らしい人。
その容姿は、瞳を除くと衣夜とほぼそっくりだった。
その人は、襖からひょこっと顔を出していた。
「どうかされたのですか? お母様」
衣夜はすぐに母の方に駆け寄った。
昔から体の弱い母は、すぐに体調を崩してしまう。
雪のように白い肌は、今日は少し血色がいいが、いつ体調が崩れるか分からない。
「今から、お母様とお出かけしない?」
「え?」