──むしろ、あやかし達に力を示すのに丁度良かったかもしれないわ。
あの令嬢に一応感謝はしておこう、と思う。
最近は、自分の力を強くもないのに自惚れ、調子に乗るあやかしが増えている。
そういった面では、少しでも多くのあやかしに狐輪家の力を示すのに良かったのかもしれない。
「衣夜さん……?」
「少し、考え事をしていました」
にこりと微笑むと、羚は申し訳なさそうな顔をした。
「本当にすみません。衣夜さんを巻き込んでしまって。衣夜さんに誤解されて、嫌われるのが怖かったんです」
「私が羚様をお嫌いになるはずがありませんわ。羚様の事は、愛しております、ので……」
衣夜は顔を真っ赤に染めながら、自分の思いを伝える。
「…………」
羚は、ただ呆然と衣夜の方を見つめた。
その瞬間、羚は顔をブワッと赤く染めた。
「あ、あい、あいして……」
「ええ。愛しております」
衣夜は真っ直ぐと、羚の瞳を見つめた。
──羚様は……?
彼は、自分のことをどう思ってくれているのだろうか。
彼も自分と同じ気持ちなのか、と。
「その、ぼ、僕も……、衣夜さんのことを愛して、います」
恥ずかしそうに顔を赤く染め、気持ちを伝える。
「嬉しいですわ」
「……か、帰りましょう。時間も遅いですから」
「ふふっ。ええ、そうですね」
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