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「ど、どどどうしましょう、羚様が、今度お会した時、贈り物があるって仰っていたの!」
「お嬢様。落ち着き下さい」
衣夜は数日前から寝ても覚めても、羚の事を考えてしまっている。
「ど、どうしたらいい? 絢子」
「ですから、まずは落ち着いて。その強すぎる妖力も抑えましょう。他の使用人共が、怖がっております」
襖の奥で、震えている使用人が数人見えた。
絢子は衣夜の妖力の強さを、彼女が幼い頃から身をもって知っているので、怖がることは無かった。
「そ、そうね……」
深呼吸して、心を落ち着かせて、妖力を抑える。
今まで、何にも臆さなかった衣夜が、ここまでなっていることに、驚きながらも可愛いと思う使用人一同。
狐輪家に仕える使用人は、基本的にあやかしが多い。
元々力の弱い一族や潰れてしまった一族、訳ありの一族など様々。
全てを迎えているのではなく、信用に値するものを使用人として迎えている。
衣夜に仕えている者達も、信用出来るから。
──……だ、だめだわ。羚様を思い出すと、胸が張り裂けそう!
自分から行くのには、全く抵抗がないが、相手から来られるのには抗体がない。
加えて相手が羚だから、というのもある。
「わ、私、一体どうしたら……」
「恋は人を変える、というのは本当ですね」
絢子が何やら話していたが、考え事をしていた衣夜には聞こえなかった。
「な、何か言った? 絢子」
「いえ。ただの独り言でございます」
「そ、そう……?」
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