決闘による国王の交代、王族の異種族との婚姻、身分制度の廃止。異例づくしの出来事に神官や政治家はてんやわんやだ。調整ミスなのか過密な日程が組まれ、戴冠式の直後に結婚式というハードスケジュールである。

 私は過去の王を知らない。けれども、新たな国王は歴代の王の中で最も気高く美しい心の持ち主だ。王冠を身につけ、民衆に祝福される彼が誇らしかった。

「ミサ、入ってもいいですか?」

 お世話になった別荘の使用人達は全員王宮に移り住むらしい。特に優しかったメイドさん達に花嫁衣装を着せてもらった。私のドレス姿を見て、私の夫となる人は息を飲んだ。

「綺麗だ……」

 私は、トリカブトのブーケを手にした。花言葉は「騎士道」らしい。彼の統治する国に咲き誇る美しい花。私がこの花に触れることができるのも彼のおかげ。私は彼の血によって生かされている。

「ねえ、ギル」

 親しみとあらん限りの愛をこめて、愛しい彼を呼ぶ。今夜は満月らしいけれども、私は人間界には帰らない。私はここで、ギルの妻として生きていく。生まれた世界が違っても、身分が違っても、それでもこの愛が本物だと自信を持って言える。

「世界で一番大好きだよ」

 ギルとならどんな困難も乗り越えていける。私はギルを愛しているから。