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鈴はアスラの屋敷に戻ってくると、すぐさま僕の女達に引き渡し、また身体を洗われ髪を整えられると違う着物を着付けられた。
淡い桃色の地に金の糸で花々が描かれている。

そして連れて行かれた部屋にはアスラが酒を一人で飲んでいて、自分の横を叩く。
鈴がそこに行って座ると、すぐにアスラはごろりと横になり、鈴の膝に頭を乗せた。

「疲れた」

面倒そうなアスラの声に鈴は笑う。

「ありがとう」
「何にだ」
「全部かな」
「強いて言えば」
「アスラが迎えに来てくれたこと」

アスラは横を向いていて鈴からはきちんと表情は見えないが、アスラの口元は軽く上がっている。

久しぶりに戻ってきた屋敷。
ここはあやかしの屋敷なのに、鈴からすれば一番落ち着く場所。
それもアスラの側が一番に。
鈴は金の髪を優しく撫でる。
そのさわり心地で、身体に触れる重さや温かさで、鈴はまた自然と涙があふれていた。

「鈴」
「はい」

アスラが身体を動かし鈴を見上げるようにして手をその頬に伸ばした。

「お前は俺の物だ。
以後離れることは許さん」

鈴は自分の頬にある大きな手に自分の手を乗せた。

「私はアスラのもの。
だからずっと一緒にいてね」

アスラの手が鈴の頭の後ろに回り、その手はゆっくりアスラの方へと引き寄せる。
鈴は目をつむり、その唇に触れた温かさにようやく心から安心できた。

チリン、と音が聞こえる。
その風鈴の音は、二人の穏やかな時間に溶け込んでいった。