鬼に、それもアスラに殺されたとなればまだ生き残った者達にも道はあるかもしれない。
そんなことを次郎は思いながら、そのアスラが抱える鈴を見れば、鈴はアスラに頼んで下ろしてもらう。
そしてまずアスラを見上げた。

「わかってる。
でもこの人達じゃアスラには叶わないのでしょう?
お父様、もうアスラ達を狙うようなことはしないで下さい。
話せばわかるあやかしだっているのです」

最後、ここで言わなくてどうする。
アスラから視線を次郎に向け、鈴はまっすぐ、そして強い声で言う。

しばし沈黙が漂い、その場は張り詰めている。
そして次郎は、無理だと答えた。

「なぜです?!」
「我々は陰陽師、あやかしを滅するのが仕事。
おそらくこの頃あやかしの数が減っていたのはアスラの指示であったのだろう」

え、と初めて聞く話に鈴がアスラを見れば、アスラは口元を緩めた。

「仕事が無くなりどれだけお前達が他の者を奪って生きてきたか実感できたか?
そして金がなくなれば娘を売る。
人減らしなどはよくあること。
だが俺の物を利用したのは許しがたい」

一気に強まった妖気に、次郎も焦りの色を浮かべた。
だが側にいる鈴はそれに何も感じていないかのようで、次郎は既に鈴が自分たちの側では無いことを知らされた。