どうすべきかと次郎の腹心達が視線を送ってくるので口を開こうとした。
「お前は鈴を捨てたな」
アスラの言葉にびくりと鈴が震える。
それをおさえるようにアスラの手が鈴の手の上に乗る。
次郎は黙ったままで答えない。
「能力の乏しい娘にあやかしを滅してその証しを持ってこい?
死んでこいと言っていただけだろう。
だから俺が拾ったのだ。
これはお前のものではない、鈴は俺のものだ」
ぎゅ、とアスラの肩に力が入る。
鈴は父親に捨てられたこともわかっているし、そこであやかしに殺されそうになったのをアスラが救ってくれたのもわかっている。
アスラは自分のものだといいながら、鈴の意思を尊重した。
その時に鈴をただの玩具だと思うなら殺すなりなんなりすればいいものを、アスラはしなかった、いや出来なかった。
それは相手が人間だからしかし陰陽師だからでも無く、鈴だから。
それをようやくアスラは気づくことが出来たが、今度は迎えに行きたくても送り出した手前いけず、じっと鈴が自分に助けを求めるまで待ってしまった。
もっと早く動けばここまで悲しませずに済んだのに。
これは俺の物。
だから、俺が。
「シグ、ここの者達を全て抹殺せよ」
「待って!」
アスラの指示にシグが頭を下げたその時、鈴が声を上げた。
「待って、殺さないで」
「何を言う。お前に酷いことをした者達だ、何の温情が必要か」
まさか殺すなどという話が出るとは思わず、鈴は焦ってしまう。
次郎や腹心はまだ立っていられたが、それ以下の陰陽師は泣きそうな顔で人によってはその場に崩れ落ちている者もいた。
それだけこの二人の揚力の強さに、自分では叶わないと絶望するのも無理は無い。
金も減り、自分の代になって痛感するこの家の衰え。