「鈴がここ一ヶ月監禁されているようです。
それも粗末な離れに」

ぴく、とアスラの方が動いたのをシグは見逃さなかった。

「どうやら我々をおびき出す餌にしようとしているのか、ずっと屋敷の周囲を陰陽師達が見張っている状態。
部下達も近づけずそれ以上の情報が掴めません」

背中しか見えないシグにアスラの心情はわからない。
だがあと一歩に思えた。

「もしや折檻でも受けているのでは」

急にその場の空気が張りつめた。
それはアスラの妖気が高まったことにシグはその圧力に耐える。

怒っていらっしゃる。

面倒がる主がその言葉で感情をあらわにした。
もうそれは答えが出ているも同然だ。

「いいのですか」

シグが問いかけても答えは返ってこない。
じっとその場でシグが待っていると、

「鈴が俺を呼ばない」

アスラの声は不機嫌そのもの。
なるほど、しっかりと様子は確認されていたのかとシグは呆れながらため息をついた。

「気になるなら持って帰ってくればよろしいのでは」
「鈴が俺を呼ばない」
「あの娘はそもそもあの時ですら最後まで助けを求めなかったのでしょう?。
あやかしを信じて助けを求めるわけが無いではありませんか」

陰陽師とあやかし、それは敵対する者同士。
だがそのことわりに、鈴だけは例外だとアスラは思ってきてしまっていた。