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「アスラ様」

縁側で寝そべっている主にシグは今日何度目かわからないが声をかけた。
そして声をかけてもシグの方を見向きもしない。

あの人間の娘を戻してから、主様は変わってしまわれた。

シグはため息を押し殺してその場を離れた。

鈴がいなくなり、シグはようやく主が元に戻ったと思っていた。
だがアスラはつまらなそうに以前娘の使っていた手鏡などをもてあそんだり、よく二人で過ごしていた縁側に寝転んでいる。
考えてみればあの娘がいた時の方が、アスラ様は仕事をしていた。
それは鈴が仕事をしなくてもいいの?と純粋に心配して聞いたのが発端だった。
面倒そうにしながらもアスラは仕事をし、それも鈴との夕食に間に合わせるためにむしろ集中して仕事をこなした。
それが今や以前より酷い。

そんなにあの娘を気に入られていたのか。

アスラはそれに気づいていない。
シグだからこそ気づくこと。
シグは既に裏で行動を起こしていた。

「どうであった」

部屋で主が行うはずの仕事をしていたシグは、障子越しに現れた部下に気づき声をかける。

「どうやらあの娘は古びた離れに監禁されている様子。
近くを陰陽師がうろついているため我らも遠くからしか確認できません」
「わかった。引き続き用心して監視せよ」

その言葉で部下の気配が消えた。
さて、と言ってシグは立ち上がる。
そして主が未だ庭園の方を向き寝転んでいる場所まで行くと、片膝をついて側に座る。