鈴が座敷牢に入れられ二週間ほど。
食事などを使用人では無く男の陰陽師達が複数人で持ってくる。
そしてニヤニヤしながら鈴が食事を終えるまで格子越しに見ながら待っていた。
表向きは複数人で行動する方がいざという時戦いやすいという理由を次郎にして、男達は代わる代わる美しい鈴を眺めに来ていた。
鈴に色々と話しかけてくる者もいて、その中には出してやろうか、ご当主様との間を取り持ってやろうかという。
食事も何故か豪勢で、それを手配してやったのは俺だ、いや俺が働きかけたのだと言い出す始末に鈴は困惑していた。
なんせこの屋敷に来て若い男の陰陽師達と話した記憶はほとんどない。
陰陽師の修行と称してあてがわれた者は全て高齢だった。
何故急に男達が自分に構うのか、鈴にはその理由がわからなかった。
「まだ何か動きは無いのか」
次郎は苛立ったように部下の陰陽師達を見回すが、皆こわばった顔のままだ。
鈴が捉えられもう一ヶ月も過ぎた頃、屋敷周辺にも何の変化も無いと部下達から報告を受け次郎は自分の考えと違う状況に苛立っていた。
鈴が何かするのかと思えば未だ力は弱いまま。
必死に次郎に取り次いで欲しいという鈴の願いを次郎は蹴って、あの日以降会ってはいない。
あやかしが様子を見に来るかと思えば来てもいない様子。
一体何が目的なのか。
次郎はそれをはかりかね、そろそろ次の罠を仕掛けるべきかそれとも別に利用すべきか考えていた。