格子に捕まり訴える鈴を見て次郎は思いついた。
これを逆に使ってやればいいのだ。
きっとここに幽閉していれば、鬼の使いが様子を見に来るかも知れない。
鈴が人間を取り込めたかどうかを。
次郎は鈴に返事をすることも無くその部屋を仲間達と出た。
そして別室に集め、
「鈴をおとりに使う。
どうやらあやかしが我々陰陽師を潰すためによこしたようだ。
間違えても鈴に近づくなよ?
おそらく鬼の使いが様子を見に来るだろう。
周囲の警戒を怠るな」
陰陽師達は神妙な顔で頷くが、内心は動揺している者が多かった。
三年前、次郎が下した死んでこいと言わんばかりの命令。
能力も乏しく見た目も貧しい、どこからともなく連れてこられた子供。
誰も同情することも無く、戻ってこないということは死んだのだろうと思っていた。
だが三年ぶりに戻ってきた鈴は、すっかり妙齢の美しい娘になっていた。
男の多いこの藤谷家では、そんな娘に直接会うことはまず無い。
様子を見に行こうとするのを次郎に釘を刺され、男達は不満な気持ちを隠すことにした。