鈴は男たちに屋敷離れの座敷牢に入れられた。
木で出来た格子、床張りの板、壁と窓の隙間は古い建物のせいで隙間風が入ってくる。
この場所には昔お仕置きと称して入れられたことがあるのを鈴は思い出していた。
だが今回違うのは、部屋一面に呪符が貼り付けられていること。
そしてあやかしの嫌う香が焚きしめられ、鈴は自分があやかしと勘違いされていることに気づく。
そこに次郎がほかの者たちを引き連れてやってきた。
部屋に明かりを灯され、実の父親の顔がようやく間近で見ればその髪は昔よりも白髪が増えたように見えた。
次郎は座敷牢と鈴を見回し、一切呪符も発動していないこと、あやかしの動きを縛る香も効いていないことで人間ではあるのだろうと判断した。
だが鈴は約三年前に家を出たきり戻ってきていない。
そして鈴と名乗る娘は次郎の知る鈴とは違う。
身につけている豪華な着物、櫛やかんざしも高価な品だ。
なによりその美しい姿。
艶やかで長い黒髪、白く透き通った肌。
名をあらわすように鈴を転がすようなその声は、思わず聞き入りそうになる。
爪の先まで手入れされ、どの国の姫でもここまで美しい娘がいるのかと思えるほど。
そんな娘があのみすぼらしい子供な訳がない。
次郎が手を動かすと格子越しに他の者が姿見を鈴に向けされる。