夜叉鬼の鈴


一人の男が鈴のそばにゆっくりと近づくと呪符を取り出した。

「お前何者だ」

この人も私のことを知っているはずなのになぜそのようなことを言うのだろう。

「私は鈴です。
時間がかかりましたがお父様に」

提灯を前に出そうとすると、男は間合いを取るように下がる。
その顔は警戒心に満ちていた。

「嘘をつくな。
鈴は三年前から行方不明のままだ」

放たれた言葉に鈴は三年?と聞き返す。

「あぁ。
そもそも鈴はそんな豪華な着物も髪飾りも持ってない。
顔もみすぼらしい娘で、似ても似つかない。
藤谷家に来たのは何が目的か」

気がつけば鈴の周りを陰陽師たちが取り囲んでいた。

「捕まえろ」

周囲の男たちが鈴を捕まえようとして鈴の提灯を奪い取った。
その瞬間、火袋は燃え上がりその色は青になった。

「鬼火だ!」
「なぜ?!」

騒然とする陰陽師を前に青い火は小さく分かれて、鈴の周りを守るかのように浮かんでいる。

陰陽師たちがどうすべきかと思ったそのとき、一瞬でその鬼火は一つ残らず消えた。
現れたのは現当主、鈴の父、次郎。

「その娘を座敷牢へ。
私が直に聞く」
「お父様!話を聞いてください!」

必死に訴える鈴を男たちは羽交い締めにして連れて行く。
周囲の者たちは幽霊ではないか、やはり恨んでなどとひそひそ話し出した。
三年前に実の娘を死んでもいいとばかりに外に放り出したのを家の者たちは知っていた。
だからここにいる者が鈴な訳がない。
そもそも家の者たちが知っている貧相でみすぼらしい鈴とはあまりにその外見は違いすぎた。