この庭園は暖かい日差しが入り、温度は暑くも無く寒くも無いので過ごしやすい。
アスラは鈴が縁側から足を下ろしているのをいいことに、ごろりとその膝の上に頭を置いた。
もうこんな光景はよくあること。
最初は鈴も驚き足が痛くなるのを我慢して固まっていたが、立ち上がれなくなった鈴をアスラは、もろい、と言って以後長い時間はしなくなった。
でも鈴の膝枕を止めようとはしない。

最初の頃よりだいぶ肉がついた。
寝転がりながらアスラはそんな事を思う。
出逢った頃の貧相な姿は、目一杯食事を与えたおかげかかなりましになり、顔の色も良くなった。
全部自分がこの娘を変えたのだと思うとアスラは不思議と満足感に浸れる。
表情も最初の頃より色々と見せるようになって、アスラはそれも満足していた。
きっと自分がとってきた獲物が肥え太ってきて喜んでいるようなものなのだろう。

鈴は自分の膝に頭を乗せているアスラに口元が自然と緩む。
金の髪は陽の光が当たらなくても美しい。
そんな髪を鈴は撫でた。
最初それを見たシグや臣下の者は心底驚き、鈴を排除すべきだと思ったほど。
だが主がそれを許している。
鬼にとって頭という一番大切な部分を、みすぼらしい人の子が撫でているなどと臣下としては許しがたいのに。
他の者はその気持ちを抑えて様子見をしていたが、アスラがちらりと視線を向ければ蜘蛛の子を散らすようにみな逃げるしか無い。
シグもそんな玩具に何故そこまでさせるのか、主の心が読めなかった。