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それから鈴はアスラの話し相手となっていた。
食事を共にし、時にどこまで続くかわからない庭園をアスラに抱えられ散歩する。
あやかしの話をしたり、自分が陰陽師として不出来である事を鈴は話す。
それをアスラは面白そうにからかえば、鈴は不満げに口を尖らせたり笑ったりした。

仕事だといって時折アスラはいなくなるが、その間も放置されることも無く他の者達が鈴に食事を出したりそれなりに世話をする。
世話をする者達は鈴が根気よく挨拶をし、話しかけることで、最初は相手も無言でいたものの少しずつ言葉を交わすようになり、微妙ながらも距離が縮まったように思えた。
そんな相手は鈴に情が湧くというよりも、あくまであの人間の子はアスラ様の玩具であると認識していたからこそ。
主が不機嫌になるよりは玩具が壊れずあったほうがいい、ただそれだけのことだった。



「あやかしはなんで人間を襲うのかな」

鈴もアスラに打ち解けたせいか、話すうちに浮かんだ疑問を口にした。

「逆だ。人間がこちらを襲うからだ」
「でも私がここに来たときに食べられそうになったよ」
「それはお前達が先に襲ってきたのを知って、そして立ち向かい人間を襲ったから味を覚えたのだ。
美味いと知らなければ襲うことも無かっただろうよ」

縁側でお茶を飲みながらアスラの態度は鈴には納得出来ない。
それは自分が教わってきたことと全く違う。
最初に人が襲われ、それを守る為に我々陰陽師はいるのだと。