「ここが極楽浄土か。
陰陽師でありながら面白いことを言う。
ここは鬼のすみかだ。
陰陽師が最高の邪悪としている鬼の、な」
さてどんな反応をするのかと楽しみに見ていれば、鈴は目を丸くした後俯いた。
「私は、食べられるのでしょうか」
鬼は人を食う。
鬼は人を惑わせる。
鬼は最強であり、最悪のあやかし。
そう学んでいた鈴は合点がいった。
こうやって優しくして食べ物を与え、そして気を抜いたところを食うのだろう。
ここなら自分が死んだことも恐らく気付かれない。
あんな森で恐ろしいあやかしに食われるよりも、最後は綺麗な着物に食事をさせてくれたこの美しい鬼なら諦めもつく、と鈴は目を瞑った。
鈴の頭に大きな手が乗る。
目を開けると面白そうにアスラは鈴を覗き込んだ。
「俺はお前のように貧相な子供など好みじゃ無い。
どうせならもっと成長してからにする」
「私を食べられるようになるまで置くのですね」
腹をくくったかのような鈴に、アスラは先ほどまでの強さはどこにいったのかと不思議に思う。
だが鬼の住み処に連れてこられ、いくら陰陽師であっても弱い自分が闘えないことを理解しているのだろう。
アスラはそんな鈴の頭を乱暴に撫でた。