「ここは、本当に綾代さんがおひとりで管理なさっているのですね」
「ああ。貴重な資料があるとはいえど、そう人手がいるわけではなかったからな。しかし、この所現場に駆り出されてばかりでロクに片付かなくなってしまって」
そう苦笑いしつつ、わざわざ手ずから茶を入れてくれた。
馴染みのある茶の香りで、少し緊張もほぐれてきたようだった。
「それより、名前で呼んでくれ。これから毎日顔を合わせるんだから、もっと気楽にしてくれ」
「で、では・・・・・・修一郎さん、と」
修一郎は雛子に名前で呼ばれて、うんうんと満足そうに頷いている。
祓い師としては一級で、戦う姿は鬼神のようだと称される彼は、話に聞くよりも穏やかで気さくな人なのかもしれないと分かった。
人嫌いだという話も、こうして向き合うとそうは思えない。
なにより、女学生とほとんど変わらない見た目の雛子に対しても親切なのがとても嬉しかった。
「そうだ、符術の修練は上手くいっているか?分からないことがあったらなんでも聞いてくれ」
「本当ですか!ありがとうございます!」
そう喜んでから、はたと気づいた。
「・・・・・・あれ、私が符術の勉強をしてるって、言いましたっけ」
「いや、以前の演練で君を見かけたことがあってな。体力はそこまでだが、符術に関しては見込みがあると思って、少し調べさせてもらっていた」
なんと。
自分の知らないところで評価されていたなんて。
雛子は祓いを行う際は、符術を主として使用している。
祓い師それぞれにより使う術はあるが、雛子は護符を操る符術が得意なのだ。
「なかなか将来有望な人材で、俺が育てたいと思ったぐらいだぞ」
「きょ、恐縮です・・・・・・!」
まさか修一郎のような人にそう言って貰えるだなんて、これほど嬉しいことがあるだろうか。
「部隊に所属できなかったのは残念だろうが、ここでなら俺の指導を直接受けられるという点では良かったかもしれないな。こう見えても歴は長い。君の良き手本になれるとおもうのだが、どうかな」
あまりの衝撃に、雛子は固まってしまった。
つまり、修一郎からの祓いを習わないかというお誘いを受けているということになる。
普通ならありえない事だ。
それも、女子だからという理由で不遇な扱いを受けてきた雛子にとっては夢のようなことである。
「いいんですか・・・・・・?」
「もちろん。部隊に所属するよりも、良い経験をさせると約束しよう」
修一郎は自信たっぷりに微笑んでみせた。
こんな千載一遇の機会を逃す手はない。
書庫のお手伝いのはずが、こんな機会に恵まれるなんて思いもよらなかったことだ。
「では、明日からよろしくお願いします!」
「ああ。俺も楽しみだ」
雛子はもう、期待に胸をふくらませるばかりであった。
「ああ。貴重な資料があるとはいえど、そう人手がいるわけではなかったからな。しかし、この所現場に駆り出されてばかりでロクに片付かなくなってしまって」
そう苦笑いしつつ、わざわざ手ずから茶を入れてくれた。
馴染みのある茶の香りで、少し緊張もほぐれてきたようだった。
「それより、名前で呼んでくれ。これから毎日顔を合わせるんだから、もっと気楽にしてくれ」
「で、では・・・・・・修一郎さん、と」
修一郎は雛子に名前で呼ばれて、うんうんと満足そうに頷いている。
祓い師としては一級で、戦う姿は鬼神のようだと称される彼は、話に聞くよりも穏やかで気さくな人なのかもしれないと分かった。
人嫌いだという話も、こうして向き合うとそうは思えない。
なにより、女学生とほとんど変わらない見た目の雛子に対しても親切なのがとても嬉しかった。
「そうだ、符術の修練は上手くいっているか?分からないことがあったらなんでも聞いてくれ」
「本当ですか!ありがとうございます!」
そう喜んでから、はたと気づいた。
「・・・・・・あれ、私が符術の勉強をしてるって、言いましたっけ」
「いや、以前の演練で君を見かけたことがあってな。体力はそこまでだが、符術に関しては見込みがあると思って、少し調べさせてもらっていた」
なんと。
自分の知らないところで評価されていたなんて。
雛子は祓いを行う際は、符術を主として使用している。
祓い師それぞれにより使う術はあるが、雛子は護符を操る符術が得意なのだ。
「なかなか将来有望な人材で、俺が育てたいと思ったぐらいだぞ」
「きょ、恐縮です・・・・・・!」
まさか修一郎のような人にそう言って貰えるだなんて、これほど嬉しいことがあるだろうか。
「部隊に所属できなかったのは残念だろうが、ここでなら俺の指導を直接受けられるという点では良かったかもしれないな。こう見えても歴は長い。君の良き手本になれるとおもうのだが、どうかな」
あまりの衝撃に、雛子は固まってしまった。
つまり、修一郎からの祓いを習わないかというお誘いを受けているということになる。
普通ならありえない事だ。
それも、女子だからという理由で不遇な扱いを受けてきた雛子にとっては夢のようなことである。
「いいんですか・・・・・・?」
「もちろん。部隊に所属するよりも、良い経験をさせると約束しよう」
修一郎は自信たっぷりに微笑んでみせた。
こんな千載一遇の機会を逃す手はない。
書庫のお手伝いのはずが、こんな機会に恵まれるなんて思いもよらなかったことだ。
「では、明日からよろしくお願いします!」
「ああ。俺も楽しみだ」
雛子はもう、期待に胸をふくらませるばかりであった。